「自分でやらせていい」と信頼する

母が病院で圧迫骨折と診断されてから、
七年と五か月が経ちました。

先日、母は一人で、バスと電車を乗り継ぎ、東京駅の人混みを歩いて新幹線に乗り、

妹や弟が待つ群馬の実家まで行きました。

ここまで元気になったのは、

「最初の関わり方」が良かったからだと思っています。


手を出さずに、信頼して見守る

ぎっくり腰をした時も、圧迫骨折と診断された時も、
私は母に施術はしていましたが、
介護と呼ばれるようなこと――
起き上がるときに支える、歩くのを手伝う、食事を口に運ぶ――
そうしたことは一切していませんでした。
(買い物や荷物を持つなどの補助はしていましたが)

母もまた、当たり前のように
トイレに行く・お風呂に入る・洗濯をする
という日常を、自分で続けていました。


痛みと対話しながら動く

当時、母は「寝返りするだけでも痛い」状態。
それでも痛み止めは使わず、
どう動けば痛くないかを自分の体に聞きながら、
少しずつ起き上がり、壁に手をついて歩いていました。

「トイレまで行けた」「お風呂に入れた」――
その一つ一つが大きな達成であり、
自分の力を取り戻す喜びになっていたのです。


☀️存在だけで支える

多くの人は「危ないから」と言って手を出します。
でも、私は「存在を感じるだけ」にしました。
何かあれば助けるけれど、
それまではただ見守る。

母は後になって言いました。
「自分の力で起き上がれた時が、何よりうれしかった」と。

手すりがなくても立てたときの喜び。
それが、次の行動への意欲を生みました。
「今度は公園まで歩いてみよう」――
そんな前向きな想いが自然と湧いてきたのです。


“やってもらう”より“やってみる”が力になる

人は良くも悪くも「慣れる」生き物です。
母のように背骨を10本圧迫骨折していても、
「自分で動こう」とする意志があれば、
体は驚くほど順応していきます。

反対に、何でも手を差し伸べてしまうと、
お年寄りの体は前のめりに傾き、
かえって転倒しやすくなります。

そして何より、
「自分でできた」という喜びを奪ってしまいます。
それは“生きる力”そのものを奪うことにもなるのです。


まとめ

回復を良くさせる最初の意識は、
「助けすぎない」こと。

 

信頼して見守ることで、
その人の中にある“治る力”が動き出します。

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